老人とプログレ

介護施設での現場のお話。プログレ、ハードロック等の音楽話。・・その他、日々の雑記、ファイターズの話題等・・

初老の介護施設管理者。経過観察&ぼやき To be a ROCK! Not to ROLL!

クリムゾン・キングの宮殿

【クリムゾンとの出会い】

 最初に聴いたのは、多分、中学1年。NHKのFMローカル曲のリクエスト番組で、「クリムゾン・キングの宮殿」のタイトルトラックを聴いたのが最初。

 当時は、洋楽を聴く番組も限られており、リクエスト番組とはいえ、貴重な情報源。かかる曲は、当時のヒット・チャートを反映したもの。クィーン、ビー・ジーズオリビア・ニュートン・ジョンなど。他はディスコもの。というラインナップの中で、突如かかった、キング・クリムゾン!度肝を抜かれたといいますか、今まで聴いたものとは全く違う!田舎者の私はインテリ・コンプレックスをくすぐる何かを感じたのでしょう。とにかく衝撃でございまして、「プログレが理解できる俺は偉い!」と勘違いの人生が始まるわけです。何もわかってないんですけど。 とにもかくにも、知覚の扉は開かれた!

The Court of the Crimson King

The Court of the Crimson King

【1977年の風景】

 自分の中学生の頃は、ちょうど1977年で昭和52年。住んでたのは北海道の東端「北見市」。地図で見ると、とんでもない田舎に思えますが、何故か、北海道はテレビ局が多く、テレ東以外のキー局はテレビで見ることができました。 東北の方はNHKと民放1局しかないと聞くと、「田舎の人はかわいそう・・」と思ってましたが、向こうから見ると北海道は「日本ですらない」感覚だったそうです。という話を後年、酔った東北人から聞きました。

 

 という話はさておき、東京の人と変わらないくらい、テレビから情報を得ていたわけですが、逆に、テレビでかからないような「洋楽」をクールなものと、捉えるようになっていきます。というわけで、情報の入手源は「ラジオ」に移っていきます。

 

 最初に買った洋楽は「ベイ・シティー・ローラーズ」。多分、小学5年の頃。当時は、「なんて激しい音楽なんだ!」と思っていましたが、友人から「もっと凄いのがいるぞ!」とパープルとかツェッペリンとか教えてもらい、徐々に興味はハードな方へ・・さようなら、ローラーズ!

 

 その友人。サカキバラ君といいまして、神戸の彼とは全く関係ないのですが、5〜3歳違いのお兄さんとお姉さんがおりまして、洋楽に関しては兄弟から英才教育を受けている恵まれた家庭。特にお姉さんの方は、「ELP」のファン。(QUEENが出る前は、日本ではELPはアイドルバンドとして受容があった様子)「聖地エルサレム」のシングルをかけてもらった記憶があります。肝心の音の方は、その時は印象に残らずピンとこなかったのですが、「ELPの前進バンドでキング・クリムゾンというのがいる」というのを、その時知りました。

 ついでにお兄さんの部屋には、「スージー・クアトロ」のポスターが貼っており、月刊PLAYBOYが転がっているという、大人の部屋。サカキバラ君の境遇を羨ましく思ったものです。

 で、時は若干経過し、上記のファースト・インパクトに至るわけです。

そんなわけで、当然手に入れようと思うのですが、先にサカキバラ君がお小遣いで購入。同時に購入したのが「レッド・ツェッペリンⅡ」。多分、自分の意志より、お姉さんも聴きたかったので、「買わされた」というのは、想像に難くありません。

【ジャケット】

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で、サカキバラ君の家に遊びに行くと、これが転がっていたわけです。

当時も今も、充分インパクトのある絵ですが、なんでもこれ描いた人の自画像だそうで、しかも「遺作」。

 

 あまりにもインパクトがあるので、パロディー作も多数。

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【発売当時の時代背景】

 ビートルズの「アビーロード」をチャートから引きづり降ろした!というコピーはガセらしく、当時の英国チャートでは5位。

 同年に発表されていたのは、

ローリング・ストーンズ  レット・イット・ブリード

ビートルズ        アビーロード

フー           トミー

ザ・バンド        2nd

レッド・ツェッペリン   Ⅰ Ⅱ

 イギリスを席巻していたサイケブームも一段落し、世間も次のムーヴメントを求めていたのでしょう。ストーンズビートルズも原点回帰して立ち位置を見直しているようなアルバムを発表。愛と平和のウッドストックも終わり、ベトナム戦争の真っ最中。そしてアポロ11号の月面着陸。

 日本はまだGSブーム。当時のレコード大賞受賞曲は、佐良直美の「いいじゃないの幸せならば」、新人賞がピーターの「夜と朝の間に」 浮かれているどころか、暗い時代ですな。こりゃ。70年安保闘争学生運動が激化。

 そして映画は「イージー・ライダー

 

【オリジナル・ラインナップ】

デビュー時のラインナップはこちら

 

ロバート・フリップ      ギター

イアン・マクドナルド     管楽器、キーボード、、ビブラフォン 他

マイケル・ジャイルズ     ドラムス、パーカッション

グレッグ・レイク       ベース、リード・ヴォーカル

ピート・シンフィールド    作詞、イルミネーション

 

 その後、長い歴史を刻むバンドですが、この時点では音楽的な方向性を握っているのは、イアン・マクドナルドとマイケル・ジャイルズ。作曲もそうですが、演奏もずば抜けて目立ってるのはこの二人。そして、全体のイメージを決定づけているのが、作詞専従のピート・シンフィールドの幻想的な歌詞。フリップ先生はこの段階では、まだ決定権を持つには至らず、後年のインタビューでも自分のプレイに関しては否定的だったりします。まだ小僧だったと・・という割には充分目立ってますが。

 

【曲紹介】

M1  21世紀の精神異常者

  (21st Century Schizoid Man including Mirrors)

 

21st Century Schizoid Man

21st Century Schizoid Man

  最初に聴いたのが「クリムゾン・キング・・」のタイトル・トラックだったので、勝手にシンフォニックな曲を演奏する格調高いバンドだと思い込んでいたのですが、1曲目を聴いてビックリ!

 不穏なSEから一転、これ以上はないというヘヴィーでプリミティヴなリフが炸裂。他のヘビメタやオルタナと並べて聴いてみても、一段抜きん出た衝撃度。理性吹っ飛んでます。ヴォーカルはイコライジングで歪みまくり。正にタイトル通りのトラック。

 ちなみに最近の邦題は「21世紀のスキッツォイドマン」なんの配慮なのか、わけがわかりませんが、人権派からクレームでも来たのか?福島瑞穂の差し金か?

 超ヘヴィーな導入部から、一転「ミラーズ」という6/8の超高速インストに突入。同時期にもクリームやらジミヘンやらで、インストを展開している例はありますが、ここまで大々的にフューチャーしているのは無かったのでは?テクニック的にも同時代のバンドとは段違い。演奏を引っ張っているのはジャイルズのスクエアなドラムですが、グレッグ・レイクのビンビンベースもポイント。有名な高速ユニゾンですが、後年のライヴテイクよりも、こちらのテイクの方が、緊張感も密着度も高し。なぜベースもユニゾンしないのか!という意見もありますが、これで正解。

 再びヘヴィーなリフに戻り、混乱の坩堝でカットアウト!至福の7分20秒。


King Crimson - 21st Century Schizoid Man (Live at Hyde Park 1969)

 

 M2  風に語りて

        (I Talk To The Wind )

 

I Talk to the Wind

I Talk to the Wind

 1曲めのヘヴィーチューンから一転、心休まるアコースティック感覚溢れる、安らぎのチューン。単体で聴いても良い曲ですが、この並びで聴くと皆さん、よほど安心するのでしょう。他のアーティストのカバーバージョンも多し。

 歌詞は哲学的にも解釈できますが、要は「Take It Easy !」スーダラ節みたいなもんです。

 後半の、マクドナルドのフルート・ソロは最高!

 

M3-エピタフ(墓碑銘)

  (Epitaph including March For No Reason and Tomorrow And Tomorrow)

 

Epitaph

Epitaph

  前曲からクロスフェードで、重々しいティンパニロールからメロトロンが鳴り響く。クリムゾンのシンフォニックな面を代表するナンバー。大方の人は、宮殿からの代表曲だと、コレを挙げるのですが、自分はちょっとToo Much!  Emキーの感傷的で沈鬱な曲で、分かりやすく盛り上がるため、日本人好みではあるのですが・・

 昔、ラジオのリクエスト番組で、リスナー投書の失恋体験を延々紹介した後に、「この方のリクエストでキング・クリムゾンのエピタフ!」という流れで聴いた時には笑っちゃいました。どんだけ落ち込んでんだよ。

 歌謡曲との親和性も高く、ジャニーズの「フォーリーブス」のカバーも存在。

 グレッグ・レイクは一世一代の名唄。キャリアハイです。

 

M4-ムーンチャイルド

  (Moonchild including The Dream and The Illusion)

 

Moonchild

Moonchild

 タイトル通りの幻想的なナンバー。ヨーロッパの古城を想起させます。ベースは聴こえいような気がするんですが、俺だけ?

 後半は完全インプロに突入しますが、この手の演奏の中ではデレク・ベイリーなんかよりも良くできていると思います。着地点だけは決まっていたのかな?フリーな演奏ですが、飽きずに聴けます。

 映画「バッファロー66’」でも使用。クリスティーナ・リッチ(アダムスファミリーの無表情な女の子)がタップダンスを披露。夢みるぞ!怖くて。


Buffalo '66 Moonchild King Crimson

 

M5-クリムゾン・キングの宮殿

(The Court of the Crimson King including The Return Of The Fire Witch and The Dance Of The Puppets)

 ここまででもお腹いっぱいですが、最後に必殺のタイトルトラック。カテドラルといいますか、教会文化のない、日本人には作れないナンバーでしょう。正にシンフォニック・ロック!

 散々感動的に盛り上げた挙句、最後はフリーキーに各楽器が鳴り響き、突如カットアウト。このエンディング考えたのは、多分ロバート・フリップでしょうが、天才!

 そういえば、郷ひろみのやった、カバーを聴いたことがあります。

【歴史的意義】

 ここまで、完成度の高いデビュー盤というのは、当時も現在も例が無いでしょうが、実はこれを製作する前に、違うプロデューサーで製作・破棄という過程がありまして、その経験も踏まえての完成度なのでしょう。やりたい放題の演奏なのですが抑制が効いているといいますか。ドラムも同じフィルインは2度と使わないとか、考え抜かれています。同時期にアメリカン・ロックを聴いていいた人は、青臭くて聴けない。なんて意見もあるようです。高橋幸宏氏のインタビューでも割と否定的。逆にジャズ界の方には影響を与えているのでは? 渡辺香津美を筆頭にファン多し。

 あまりにもテクニック先行なので、ロックンロールの「初期衝動の発露」という概念とは相容れない部分もあり、デビュー前のライヴハウスマーク・ボランとも揉めたなんていう話もあります。

 

 同時期にピンク・フロイドやムーディー・ブルースも活動しており、コンセプトアルバムやオーケストラとの共演なんてのも既にやっているのですが、サイケの残り香やブルース臭さを払拭し、ジャズやクラシックからの影響をミックス。テクニックと構成美を全面に押し出した、正に「新しい音楽」。(当時のですが・・)ジャケットも含めたトータルアートを提示・・・などなど。プログレッシヴ・ロックの歴史はここから始まる。

【メンバーその後】

 で、デビューにして最高傑作をものにしたメンバーは、いそいそとアメリカツアーに出発。したものの空中分解。マクドナルドとジャイルズはツアー疲れが原因だそうですが、よりフォーキーな志向を目指します。唯一残されたデュオアルバムはイギリス人のユーモア感覚があふれた傑作。

 グレッグ・レイクは、ツアー中に知り合ったキース・エマーソンに「どうだい組まないか?儲けようぜ!」とELP結成に進みます。ちなみにレイクは、メンバー唯一の肉食系。ここまでアカデミックなバンドなのに、楽屋に女連れ込んでたそうです。

 残された、フリップとシンフィールドでバンドは継続。紆余曲折を経て、フリップが絶対的権力を掌握し、他の追随を許さないカルトバンドとして、50年近い歴史を刻むことになります。

 

 そんで私はというと、サカキバラ君にカセットテープに録音してもらい、ずっと聴く羽目に。中1にして世の中わかったような気になっていました。精通前ですね。

 それからずっと聴いてるわけで、今でも月1回くらいの頻度で聴いてます。(エピタフ飛ばして聴いてますけど) リアルタイムで流行ったものも当然聴いていくわけですが、同時にクリムゾン周辺の音源や人脈に連なるバンドを聴いていくことになります。

 同時に永井豪の漫画や、ホラー映画など、サブカル趣味も開花。女にモテない要素ばかり追いかける人生が始まり、現在に至る。まさしく「混乱こそ我が墓碑銘」の晩年に突入しているわけです。エピタフ飛ばして聴いてきた報いでしょうか?

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In the Court of the Crimson King

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