アニマルズ (Animals Pink Floyd)
【フロイドとの出会いはゴミステーション】
ピンク・フロイドの中で、一番好きなのはコレ!と言うと、必ず失笑されるのですが、好きなんだからしょうがない。
音楽に目覚めた頃に、リアル・タイムで出ていた新作。
これ、実は買ったんじゃなく、近所のゴミステーションで拾いました!
多分、1978年の夏、の日曜日。近所で行わていた小学校の運動会を見に行った友人達から、「ゴミステーションに捨ててあった引っ越し整理の荷物の中にレコードがあったぞ!」と報告を受け、いそいそと見に行くと、そこには吉田拓郎や井上陽水とかに混ざって、QUEENやKISS,レインボーの2NDなどが・・で、友人達と山分けなのですが、私はローリング・ストーンズと、これ「アニマルズ」をゲット!
当時聴いていたのはパープル関係が中心。クリムゾンを聴き始めてプログレにも目覚め始めた頃で、雑誌を読むと別格で「ピンク・フロイド」というのがいるぞ・・というのは情報で知っていました。「幻想的」とか「音と光の融合」など、想像もつかない謳い文句が並んでおり、日本で過去に行われたコンサートは伝説的であったと・・では、どんな音なのか・・
【バンド略歴】
一応、バンド略歴を。
1967年デビュー
当時のイギリスはビートルズは「サージェント・ペパーズ・・」、ジミヘン渡英でサイケデリック・ブームの真っ最中。実験的なサイケの音作りとポップ色もあり、一躍人気バンドに。デビュー時のメンバーは、
シド・バレット (ギター ヴォーカル)
ロジャー・ウォーターズ (ベース ヴォーカル)
リック・ライト (キーボード)
ニック・メイスン (ドラムス)
しかし、ドラッグの影響で、リーダーのシド・バレットが役に立たなくなり、残りのメンバーは、非常にもリーダーを切る!という決断に出ます。ストーンズと同じですね。
そして、シド・バレットからデイヴ・ギルモアにメンバー交代。ここからラインナップが固定。モンスター・バンドへと駆け登ります。
2NDアルバムからは、徐々にサイケ色を排除。構成に力点に置いた曲作りをするようになり、ヨーロッパ各地では評価はうなぎ登り。1970年発表の「原子心母」はブラスセクションやチェロ、混声コーラスを導入し、「ロックとクラシックの融合」と高い評価を得ます。またキューブリックの「2001年宇宙の旅」の音楽を担当するというような話もあったとか・・
続く71年発表の「おせっかい」で、4人の総力をあげたコラボは頂点に。特にアナログ片面1曲を占める「エコーズ」はフロイドを代表する名曲。筋金入りのフロイドファンはこれをベストに推す人多し。同時期に初来日。野外で開催された「箱根アフロディーテ」では朝靄のかかる中で「エコーズ」を演奏し、自然の力も借りて伝説と化します。
73年発表の「狂気」はウォーターズ主導によるコンセプトアルバム。これがアメリカでも当たり、最終的にはヒット・チャートに10年以上居座る大ヒット。累計販売枚数2億3千万枚というモンスター・アルバムに・・・
という大成功をしてしまった故に、活動を継続する必要もなくなり、「狂気」を主導したウォーターズと他メンバーとは齟齬ができてしまいます。
次のアルバム「炎」までは2年のインターバル。前作から売上は落ちますが、これも英米で1位。若干内省的なトーンに変化し、革新的な音楽を求めるマスコミやファンからは不評だったようですが、そんな中発表した期待の新作(当時)が「アニマルズ」
【アルバム解説】
冒頭と最後に入っているアコースティック弾き語りの小品「翼を持った豚(Pigs on the wing)」に挟まる型で、ジョージ・オーウェルの「動物農場」を意識した、動物の名前を付けた3曲を配したコンセプト・アルバム。 コンセプトは当時中学生だった自分でも、「ちょっと陳腐化な?」と思わせるものでしたが、アルバム全体をこういう風に使っている作品は初めて触れたので、田舎者のインテリ・コンプレックスをくすぐるには十分な代物でありました。
2. ドッグ (Dogs)
「You gotta be crazy !」が原題。「狂気」で描いたテーマの続編とも取れますが、ここでのモチーフは、ホワイトカラーのエリート・ビジネスマン。
アコギのストークから始まりますが、これがDm9。カーティス・メイフィールドとかニュー・ソウルの影響が若干あるのかも? アコギで曲を引っ張りますが、要所要所でギルモアのギターが雄叫びをあげます。コード単体ではオシャレですが、全体の雰囲気はやさぐれている感じがたまりません。正にハードロック!! 歌詞は辛辣。この主人公、どうせ最後は癌になって南部で死ぬそうです。コンクレート風のシークエンスを挟んでの、フロイドお得意のリフレインのパートでは滔々と「いかにお前の人生がダメなのか」説教されます。
3.ピッグス(3種類のタイプ)
Pigs (Three Different Ones)
ブルース風のハードロック。モチーフは資本家というか成金。歌詞も漫画的。
ただし、攻撃的な演奏は印象的で、途中に入るナチュラルなギター・カッティングや半端な変拍子処理も効果的。はっきり言って好きです。この曲。
エンディングにかけてのギルモアのギターは最高! 個人的には「Comfortably Numb」のソロよりこっちかな・・
4.シープ (Sheep)
二拍三連のりのハードロックナンバー!と3曲ともハードロックと紹介してますが、本当だからしょうがない。構成美が光るナンバー。
フロイドは他のプログレ勢と比較すると、テクニックに欠けるという評価もありますが、簡単なモチーフを格好良く構成する術に長けており、この辺はリック・ライトの功績なのかと思いますが・・・こういう曲でのウォーターズのベースは格好いいですね。
ここでも主役はデイヴ・ギルモア!
最後に冒頭と最後に配置された、「Pigs on the wing」ですが、アコギ1本でのラブソングと言いますか、軽い決意表明。なんとも力の入らない、いい湯加減のナンバーですが、終わった瞬間に「Dogs」がフェードインしてくる瞬間は何とも格好よし。効果的です。
全体通してですが、印象に残るのはギルモアのギターと、リック・ライトの冷たい音色のソリーナとシンセ。友人はこのアルバムを評して。「ギターアルバムとしては最高!」と言い切っていました。そしてニック・メイスンの独特のタイム感のドラム(多分おかず入れるときは呼吸止めてる?)と、ウォーターズのソリッドなベース。
どのピースが外れてもピンク・フロイドは成立し得ないのですが、そういう体制で作ったのは今作品が最後。実際に当時の人間関係は既に険悪だったそうで、イギリスはサッチャー出る前で大不況。セックス・ピストルズがデビュー前のパンク勃興前夜のロンドンはかなり不穏だったと思いますが、そんな雰囲気の中制作されたアニマルズは前後のアルバムと比較すると、あまりにも攻撃的!そして刹那的! フロイドな特徴とも言える効果音の使用も減り、幻想的な部分のかけらもないのは、ずっと聴いてきたファンには違和感だったのでは? ただし、最初に聴いたのがコレ!という私のような者には、この路線でずっと続いていただければ・・・という衝撃の内容だったのですが、次回作はロジャー・ウォータズの独裁体制が頂点に達した「The Wall」 個人的には興味を失ってしまい、リアルタイムでのフロイドとのお付き合いはこれで終わり。リスナーとしては過去作へ向かいます。
【フロイドと最接近】
なんだかんだで、1stからアニマルズまでは全て愛聴盤。一旦解散して、ギルモア主導でフロイド復活。88年には来日公演も実現。
という当時、私、札幌でやっていた「プロビデンス」というバンドに在籍しておりまして、初の東京でのワンマンが実現。同時期にフロイドは「日本武道館」、プロビデンスは「吉祥寺シルバーエレファント」で全く勝負にならないんですが、シルエレの方にも100人程度集まっていただきました。当時お越しいただきましたお客様、誠にありがとうございます。私だったら間違いなくフロイド選ぶけどなぁ〜
そんなバンドが再発されるそうです。(私参加してませんけど・・)ついでに、名作、ミスター・シリウスの1stも無事再発。気になる方はどうぞこちらを・・・